固まりかけのメロンゼリー

好きなことや、行った場所のこと、思ったことなどを書くつもりです。

改めて今泉力哉監督の映画の何が好きなのか考えてみた。作家・柴崎友香作品の味わい方との共通点―「サッドティー」@元町映画館

2カ月ぶりくらいに元町映画館に行ってきました。

 

東京の方で公開されてから半年くらいずーーーーーーーーーーーっと首を長くして神戸でやってくれるのを待っていた、

今泉力哉監督の「サッドティー」を観るためです。

最近は映画を見る機会もそんなに多くないので、あんまり偉そうな文章は書けないのですが、このブログでは私の好きなものについて色々喋りたいと考えているので、なぜ今泉監督の映画が好きなのか少しだけですがまとめてみました。

 

あんまりネタばれとかサッドティーのレビューにはならないかも。

 

 

 



 

まず、もうね、めっちゃ面白かった!

 

映画館で今泉監督の作品を見るのはたぶん2作目。

前は、「こっぴどい猫」を観ました。前も元町映画館。



 

 

 

 

 

前作もめちゃくちゃ笑わせてもらったのですが、

今回も劇場の中であちこちこちからクスクス…の笑い声が。

 

「今まさにココ!」っていう面白い箇所もちゃんと用意されてるものの、

私は今泉監督の映画がかなりツボで、

別に「笑う場所」にはなってないであろう部分にもクスってなる。絶対なる。

 

 

 

だって出てくる人「ダメな人間」ばっかなんだもん。

 

「ダメな人間」というか、みんな不器用というか。

「それ言っちゃもうダメでしょー」

「あーそういうことしちゃうのかー」

「なんでその人相手にそれ出来ちゃうわけ?」

みたいな言動の数々。

 

 

でも、何が悔しいって、哀しいかなそんな残念な言動の数々がやけに共感できることだったりもする。

会話の間の取り方とか仕草とか、

何にも気取ってなくてやけにリアルだから。

 

誰に共感するか、誰を拒絶するかは観る人によっても違うのかもしれない。

私は、園子ちゃんかなー。

 

 

 

今泉監督の映画は、部活の先輩から教えてもらったのがきっかけです。

 

「最低」

最後の方のすごい気まずい空気になってるところ、画面越しに見ててもめちゃくちゃ伝わってくる。爆笑しながら見た覚え



「足手」

制服着てるふみちゃん可愛いなあ。今回のサッドティーの抜けた感じもかなり良かった。



「終わってる」

これのどうしようもない感じが好き。

確か先輩に勧められて初めて見たのがこれだった気がする。



あと冒頭にものっけた「こっぴどい猫」

 

他にもあるんでしょうが、私が見たのは今のところこの辺りです。

以下、自分なりの解釈で恐縮なのですが…

 

 

共通して私が好きなのは、映画の空気!

こういうこというとなんか「映画分かってる人風」になるからなんか嫌だな(笑)

観た人は絶対分かると思うんだけど、全然気取ってない。全然かっこいい風景も台詞もない。

会話の間の長い間だったり、生活音だけの風景、そういうのが特に好き。

スクリーンを眺めてるこっち側は、「今こいつ何考えてるんだろ」「こういうとき自分だったらなんて言うんだろ」っていうのを待つ。

 

待ってる間、私は画面めいっぱい映ってるものを観察してる。

今後ろ通った電車、あの車体の色だったら何線だろ、とか

やけにインテリアお洒落だなあとか、朝ごはんの目玉焼両目っぽいな、とか。

そういうことを観察してる。

 

 

そしたら突然BGMのイントロがうまい具合にはまってきたりして、

うおおおおおおおお動き始めたな!ってゾクゾクさせられる。

今回の「サッドティー」は特にそういう瞬間が多かった。

 

 

さっきも言ったけど終盤の展開では周りの人みんな笑ってた。

「さあここから面白いラストだぞ!」感の溢れる演出に、存分にゾクゾクし、

まんまと持ってかれました。

 

「こっぴどい猫」の時も、この、さあここからだぞ!という演出が終盤にあって

同じように会場内クスクスだけではなく、吹き出して笑ってる人が沢山いた印象です。

 

 

 

 

 

あー楽しみに待っててよかった。

 

 

 

 

最後になりますが、これは完全に私見。

さっき言った「画面いっぱい観察しながら鑑賞する」感じ、

作家の柴崎友香さんの小説を読んでる時の感覚に似てる気がします。

 

「春の庭」

この間芥川賞をとったもの。

春の庭

春の庭

 

 

 「寝ても覚めても」

読んでる側からしたらとことんダメな恋愛してる主人公の話。

寝ても覚めても (河出文庫)

寝ても覚めても (河出文庫)

 

 

 

別に雰囲気が似てるとか、出てくる主人公が似てるとかではなく

柴崎友香さんの書く文章はとにかく視点の移動が多くて

目に映るもの全部書いてるんじゃないかと思うほど視覚情報が多いです。

知人に勧められて初めて読んだ時には、

「なんだこりゃ本文に関係ない文章こんなに挟まれたら読みにくいよ」

と思って苦手意識を持ちかけたのですが…

 

この間芥川賞作品の「春の庭」を読んだ時に

「ああ、もしかしたらこの柴崎さんの文章は、今泉監督の映画を見てるときのような楽しみ方をして読めばいいのか?」と気がついたのです。

 

とにかく画面いっぱい観察する。

 

普段の日常生活での会話って、

誰かが何かを言ったからといって、

機械のようにポンと反応がすぐに返ってくるわけじゃない。

お洒落な台詞がスラっと返ってくることなんてない(ていうか芝居がかった台詞面と向かって言われたら寒い)。

 

″会話の間の長い間だったり、生活音だけの風景、そういうのが特に好き。

スクリーンを眺めてるこっち側は、「今こいつ何考えてるんだろ」「こういうとき自分だったらなんて言うんだろ」っていうのを待つ。”

 

って、今泉監督の映画の個人的な鑑賞の仕方を書いたけど

柴崎さんの話もこういう感じで味わえば良かったんだな、っていうのが最近の一番大きな発見だった。

 

 

 

 

 

 

…という話です。

なんか上手くまとまるわけじゃないね。

今泉監督作品にしても、柴崎さんの作品にしても

まだまだ全部見たわけじゃないので。じわじわどっちも手を出していこう

 

 

 

 

BGM:トリプルファイヤー「エキサイティングフラッシュ」

この映画の挿入歌、主題歌は全部この方たちの曲でした。

今回初めて知ったのですが、めちゃくちゃかっこいいな!

 ちょっとネタばれになるけど、「サッドティー」冒頭の競歩の足音との重なる瞬間超かっこよかった!!!!!!!



 

おわり。